窯出ししたばかりのこの皿は、ピンク土の素肌に片側だけ青銅結晶釉が流れ込み、焼成の熱と酸素が釉薬の中の銅を結晶化させ、深い青緑が島のように浮かび上がりました。結晶が集まった部分は厚みを帯び、光を受けるとまるで水面に陽が反射するように輝きます。ろくろ目が刻んだ同心円が土の地平線となり、青銅結晶が描く模様は遠くから見下ろした森や湖のよう。釉薬がたまった部分はゆるやかな地形を思わせ、焼成中に流れた釉の痕跡が炎が描いた風景画のように残ります。カルパッチョやマリネ、透明感のある野菜を盛ると青銅結晶が水底のように透け、食材が湖面に浮かんでいるかのように見えます。オイルやソースが流れると釉の結晶が光を跳ね返し、皿全体がひとつの風景に変わります。結晶の大きさも流れ方も一点ずつ異なり、料理とともに一度きりの景色を作り出す。食卓は小さな自然であり、窯と炎がつくった風景の上に料理という物語が立ち上がる瞬間がここにあります。